あのダウンロードフェスが日本でも開催される
そんな発表を目にした瞬間、心踊ったメタルファンは私だけでは無いはず
ダウンロードフェスはもともとイギリス発祥の音楽フェスで、ヘヴィメタル・ハードロックをはじめ、ミクスチャー、グランジ、パンクまで、広くラウドロック全般のアーティスト構成で開催されます
2018年は日本で最大のメタルフェス、ラウドパークが開催されなかったりで、日本のメタルシーンの先行きに不安を感じずにはいられませんでした
そんな中でダウンロードフェスが無事に日本で開催され、本当に嬉しいかぎりです
オジーオズボーンのキャンセルというアクシデントもありましたが、ジューダスプリースト、スレイヤー、ゴースト、アンスラックスなど、熱いメンツが揃いました
すでに専門メディアでは詳細なレポートが掲載されていますが、本記事では、1人の一般参加者目線で、日本で初開催のダウンロードフェスを振り返ってみたいと思います
もくじ
会場レポート
百聞は一見にしかず。まずは会場の様子を写真でご覧ください
会場の良かった点
フォトスポットが充実していたり、専属のスタッフや一緒に写真を撮ってくれるモデルがいたり、マスコットキャラクターと一緒に写真を撮れたりと、会場レイアウトはインスタ映えを意識していました
ブースではモンスターエナジーが力を入れていて、無料でドリンクを配布する太っ腹ぶり
その他にもメタルTシャツ店が出店していたり、ライブ以外に楽しめる要素が散りばめられていました
再入場OKなことも地味に良かったです。近くのコンビニを気軽に使えて、財布にも優しいフェスでした
改善して欲しいところも…
欲を言えばもう少し会場を広くして欲しい。日本でのメタルフェスの規模としては、これが集客的に限界なのかもしれませんが…
人の動線にも一考の余地があるでしょう。今回はそれぞれのステージを背にした2ステージのレイアウトで、それ自体はステージが広くてとても良かったです
ただ、どうしても入り口近くに人がたまってしまう構造で、ライブスペースの行き来が大変でした
両側からステージに入ることができれば完璧ですね
物販の混雑具合も相変わらず。今回に限らず、ライブ会場での物販は何とかならないのでしょうか
VIPチケットについて
会場でさまざまな優遇が受けられる専用入場券ですが、今回とくに目立ったのがライブ会場でのVIP専用エリアでした
私は一般チケットで入りましたが、VIPエリアとアーティストとの近さはめちゃくちゃうらやましかったです
こういった券種を売ることには賛否両論があると思いますが、私自身はあっても良いのではないかと思っています。ただ、今回は優遇の差が結構デカかった…
一般的なフェスのVIPエリアは、比較的後方の視界が良い場所ですが、今回はとにかくアーティストに近づけるように設定。これを見せられると、次回からVIPチケットを買わざるを得ないかなと思います
後方でもモッシュピットは盛り上がってましたが、まったり見たい人は、さらに後方から見ざるを得なかったような状況でした
ライブレポート
今回はどのアーティストを見るべきか、本当に迷いました。セットリストを見た瞬間、多くのメタラーが「休憩する時間が全く無いじゃないか!」と嬉しい悩みを抱えたのではないでしょうか
そういうわけで、全てのバンドをしっくり見られたわけではないですが、抜粋して各バンドの感想を記します
AMARANTHE(アマランス)
女性ボーカル、男性ボーカル、デス声(男性)のトリオ・ボーカル編成のメタルバンド。エレクトロの要素も取り入れられています
いろいろな特徴がクロスオーバーされながらも、全体的にはきちんとまとまっており、うまく良いところを組み合わせたなと感じました
やっぱりステージに女性がいると花がありますね。美しさとかっこよさに惚れ惚れしてしまいました
ちょっと残念だったのが、女性ボーカルの声量がもの足りなかったことでしょうか。期待の若手であることには間違いないので今後が楽しみです
HALESTORM(ヘイルストーム)
アマランスに続き、こちらも女性ボーカルのハードロックバンド、ヘイルストーム。ギターボーカルの佇まいがめちゃくちゃカッコいい
フロントマンのリジー・ヘイルは私が大好きなドリーム・シアターというバンドの作品にも出演しています。ちなみに、ドラムはボーカルの実の弟です
ボーカルはめちゃくちゃパワフル。声量はんぱなかったです
ライブで印象が変わるバンドはよくありますが、まさにこのバンドがその典型。ハードロックの王道を行く盛り上げ方で、会場を沸かせていました
日本のガールズメタルバンド、LOVEBITES(ラブバイツ)のゲスト参加もあったりで、フェスならではの演出も行なっていました
ARCH ENEMY (アーチ・エネミー)
スウェーデン出身のメロディック・デスメタルバンド。アマランス、ヘイルストームに続きまたまた女性ボーカル。今回は女性ボーカルのバンドが多いですね。男臭いメタルフェスではいっそう華やかさを感じます
と、言いつつも、前2バンドとは打って変わってこちらはアグレッシブなデス声のスタイル。野獣のような咆哮とともに、観客に向けて鬼気迫るパフォーマンスを行っていました
ボーカルがアリッサ・ホワイトに変わって初めて見るライブでしたが、すっかりバンドには馴染んでるようで安心しました
さらにギターの交代後も初ライブでしたが、ジェフ・ルーミスはやはり上手い。以前に在籍したネヴァーモアというバンドの頃から彼のプレイは気に入っていましたが、アーチ・エネミーでも見事にその本領を発揮していました
日本のメタルシーンでアーチ・エネミーは大人気のバンドですが、その人気ぶりは相変わらずで、会場後方まで人はびっしりでした
ただ、ドラムがもたつき気味だったのが少し気になりました。調子が悪そうに見えましたが、そんな中でも上手くまとめていて、さすがと言えるライブを見せつけてくれました
ANTHRAX (アンスラックス)
スラッシュ・メタル四天王の1つが満を持して登場。スレイヤーと同じ日にアンスラックスが見られる幸せを感じながらライブに臨みました
そんな感慨に浸る中、登場SEにアイアン・メイデンの「The Number Of The Beast」が流され、冒頭はパンテラの「Cowboys From Hell 」の演奏から入る。こんな演出にテンションが上がらないわけがない!
そこからなだれ込むように「Caught In A Mosh」へ。多くのメタルヘッドたちがモッシュピットの海へ旅立ちました
その後もテンションを途切れさせることなく、アンスラックスの数々の名曲が披露されましたが、圧巻だったのはラストの「Indians」
曲の途中で「War Dance!」という掛け声と共にモッシュが始まる演出があるのですが、始まった瞬間に一時中断。そこからメンバーの1人であるスコット・イアンが煽りまくる
私は英語が得意でないので正確には何と言っていたかは聞き取れませんでしたが「こんな盛り上がりじゃ、俺たちは満足できないぞ!」的なことを言っていたと思われます
こんな演出に日本のメタルヘッドが黙っているわけもなく、この日で一番巨大なモッシュピットが誕生。魂のこもった「War Dance」が見せつけられたのではないかと思います
GHOST(ゴースト)
小休息をはさみ、ゴーストへ
見た目はかなり特徴的で、フロントマンは白塗りメイク、バンドメンバーは全員同じような被り物をしています。色物バンドかと思いきや、グラミー賞の受賞歴もある確かな実力を備えたバンドです
見た目からゴリゴリばデスメタルやブラックメタルが飛び出すのかと思いきや、王道のヘヴィ・メタルやハードロック、プログレッシブ・ロックやポップの要素も含んだ音楽性で、かなりキャッチーです
ゴーストのライブは初めて見ましたが、エンターテイメントのツボをよく抑えている感じがすごく良かったです
フロントマンでボーカルを務めるコピア枢機卿(という設定)の一挙手一投足に目が釘づけになりました。ぜひフルセットのライブを見てみたいですね
SLAYER (スレイヤー)
この日のメイン。スレイヤーのためだけにダウンロードジャパンに来たと言っても過言じゃない。なぜならスレイヤーのライブが見られるのはこれが最後だから…
2019年3月現在、スレイヤーはラストツアーを行っている真っ最中ですが、日本にも別れのあいさつをしにやってきてくれました
ステージには舞台幕が張られ、「Slayer!」という歓声があがる。いつも通りの物々しい雰囲気
そんな状況で幕がおり、最初に披露されたのが「Repentless」、最新アルバムからの選曲です。はじめてこの曲を聴いた時「60近いおっさん達がまだまだこんな楽曲が作れるのか…」と思ったのをよく覚えています
その後に披露された楽曲はまさにスレイヤーの歴史を振り返るようなセットリストでした。スレイヤー=スラッシュ・メタルは普遍の真理であり、他のバンドでは到達できない領域に君臨しています
私はスレイヤーのかっこよさは「ブレない」ところと感じており、今回のライブも最後だからと言って特別なことはほとんどありませんでした
曲の間で起こるSlayerコール、「War Ensemble」の前の掛け声、「South Of Heaven」からの「Raining Blood」、ラストの「Angel of Death」
全てがいつも通りに進行していきました
ただ、ひとつだけ違ったのがトム・アラヤによる最後のあいさつでした。ステージ上からファンの様子をじっくりと笑顔で眺め、おもむろに紙のメモを取り出し、わざわざ不慣れな日本語でこう読み上げました
「私達の最後のショウです。とても悲しい。さようなら。いつかまた!」
最後に思わず泣きそうになりました。同時に、本当にこれが最後なのだなと実感。いつかまた」とのことなので、また違った形で彼らと再会できればいいなと思います
ライブは見られなくなってもスレイヤーの音楽は不滅です\m/
JUDAS PRIEST(ジューダス・プリースト)
スレイヤーの魂のこもったライブで力尽き、恐れながら地に伏してメタルゴットを拝聴
以前に見たロブ・ハルフォードは、正直もう限界かなって感じだったのですが、今回は声が前回より段違いに出ててびっくりしました
70歳近いのにペインキラーを歌えるすごさ、空いた口が塞がりません。と、同時にテンションも爆上がり
ペインキラーは私の青春で、よくカラオケで歌ってドン引きされてました。メタラーあるあるだと思いますが、どうでしょうか…?
話はそれましたが、メタルゴッドの名に相応しい完成されたライブが繰り広げられ、盛況のうちにダウンロードフェスは大団円を迎えました
まとめ 〜日本のメタルフェスの未来〜
日本で初開催のダウンロードフェスは、結果的に良いスタートが切れたのではないかと思います
ただ、今後も日本でのメタルフェスは集客面で不安を抱えていくでしょう。音楽にも流行がありますが、メタルにとっては厳しい時代が続いてるように思います
もともとメタルは少数派の音楽で、逆にメジャーになってしまったらそれはそれで歯がゆいというジレンマもありますが(^^;)
そういった意味では、今回のダウンロードフェスの規模感はちょうど良かったのかなと思います。ラウドパークのような2日間の開催ではなく1日にまとめ、2ステージのみのコンパクトな開催にするのが、ちょうど良いのかもしれません
来年の開催予定も公表しているようなので、引き続き頑張って欲しいところですね
ダウンロードフェスの開催にはラウドパークのプロモーターであるクリエイティブマンも関わっており、ラウドパークとの差別化が気になるところ
昨年の時点では、2019年はラウドパークは開催の方向で動いているようでしたが、ダウンロードフェスの様子から判断して、開催方法が変わってくるかもしれませんね
いずれにしても、実力のあるアーティストを呼んでくれればメタルファンは自ずと集まるはずなので、ぜひともアーティストの招致に力を入れて頂きたいところ
メタルに限らず音楽フェス全体に言えることかもしれませんが、世代交代が必要な時期も来ているように思います
過去12回の開催されたラウドパークのうち、スレイヤーが5回もヘッドライナーを務めており、言ってしまえば2〜3年に1回はスレイヤーを見ている計算になります。ラウドパークではなくスレイヤーパークと改名してもいいくらいかも
今まではこれで通用(?)していたかもしれませんが、帝王はついに第一線から退きます
そのような中でヘッドライナーを務められるようなメタルバンドを探しても正直あまり思い浮かびません。個人的にはA7Xやマストドンかなと思いますが、世間的にはもうひと押し欲しいところかなと思います
そうするとなるとベテランに頼らざるを得ないですが、スレイヤーのようにいつかは引退の時期がきます
こうした状況ではありますが、ダウンロードフェスの開催は素直に喜ばしいことだし、今後も末永く続いて欲しいと願っています。と、同時にファンもそれに応えていかねばならないですね
プロモーターの尽力とアーティストの素晴らしいパフォーマンスに称賛を送り、今回の記事を終わりにしたいと思います。ここまで読んでくださり、ありがとうございました